実はオリンピックのある年は血圧の高くなる方が多いのです。原因は色々あると思います.まずは精神的な緊張です。 選手と一緒になって応援しているとつい興奮してしまいますものね。 もう一つは時差の関係でテレビの放送が夜中になる事による生活リズムの乱れでしょう。 今年のトリノオリンピックは幸いにもというか日本選手の活躍が低調でしたので血圧が上がって来院された方はいませんでした。唯一荒川選手が女子フィギュアで金メダルを取った朝に塩山の患者さんが血圧が上がり体調を崩して来院されました。ところで日本中で荒川選手のイナバウアーを密かに試みて腰痛になった人が整形外科に押し寄せているとかいう噂です。 皆さんは大丈夫?
今回は血圧のうちでも早朝高血圧についてお話しします。 日本人成人の4人に一人は高血圧と言われています。また、糖尿病の方では血圧が高いと病院で測る血圧は普通家庭よりも高い事が多くこれを白衣高血圧と呼んでいます。 白衣を見るとどうも血圧が高くなるかたが多いようですが,(これは通常治療の必要はありません。) だから病院での血圧が1回高かったからと言ってすぐに治療を開始してはいけない訳です。まずは家で自分で血圧を測って(自己測定)記録してみましょう。 不要な治療を受けなくて済む可能性があります。
患者さんに頼んで血圧の自己測定をしてもらうと、実は10%程度に家庭での血圧の方が病院より高い方がいらっしゃいます。 これを仮面高血圧または逆白衣高血圧と呼ばれています。 図1に白衣高血圧と逆白衣高血圧の関係が書いてあります。 必ずしも家に居る方が外出しているよりストレスが多くて血圧が高いのだと言う訳ではないようです。 既に高血圧の治療を受けており朝食後に降圧剤を服用し一番薬の効く午前中の診察時間に血圧が下がっている事が原因であるケースが多いようです。 近頃の薬は一日1回の服用で良いと言う事を売り物にしている場合が多いようです。 確かに、昔に比べると作用時間が長いものが増えてきました。 しかし一歩間違えると薬の濃度が一番低くなる朝食前には血圧が高くなっている可能性があるのです。 朝の血圧は自分で測らないと分からないと言うのが問題です。 病院での血圧に関わらず早朝に血圧が高い事を早朝高血圧と呼んでいます。
早朝高血圧がどうして重要かと言うと早朝高血圧が心筋梗塞,脳梗塞、狭心症などと密接な関係を持っているからです。 図2は糖尿病患者さんで早朝の血圧が如何に心臓の病気と関係しているかという事を示したグラフです。 皆さん如何ですか? 横軸が血圧です。縦軸が危険率です。同じ血圧で見ると早朝血圧の方が遥かに危険率が高いでしょう。これを見ると家庭血圧計を購入して自分で血圧を測ろうという気持ちになりましたか? 医者の測る血圧は信用できないと思われても困るのですが,『賢い消費者』という言葉がバブルの前の時代によく使われましたが『賢い患者』になって医者に言われるままではなく血圧と戦う知恵と気概が必要です。
早朝高血圧には2つのタイプがあります。
夜明け頃から朝にかけてぐっと血圧が上がって(具体的には就眠前と比較して20mmHg以上上昇する)くるタイプと夜中もずっと血圧が高いタイプです。 正常の人では夜は睡眠に適するように副交感神経が優位になって血圧も低くなります。 しかし、交感神経の緊張しやすい人では夜も血圧が高いままで、特に、朝になって『さあ!仕事だぞ』とか『早く起きて朝ご飯の準備をしなくてはいけない!』などという時間になるとぐっと血圧が上がる訳です。 高齢者では交感神経が強く働くそうです。 そう言われてみると『自分も近頃何故か怒りやすくなった』とか『なんだか心臓がどきどき強く打つ様な感じがするな』と感じる事はありませんか? これは年齢が上がって交感神経が強くなったためです。
高齢者ではなくても不眠症で交感神経が緊張して血圧が高い人がいる事も知られてきました。不眠症の半分は適切な対処や治療をされていないという報告があります。 不眠症は隠れた高血圧の原因として忘れてはならないものです。
さて2つお知らせがあります。
1つは4月22日土曜日午後1時から山梨大学で腎臓病の講演会を開きます。
糖尿病の患者さんの一番の合併症は腎不全です。 患者さん向けの講演会です。僕と大学の栄養士の小林さんが喋ります。 案内を同封します。どうぞお越し下さい。 大学での勉強会は今回が第1回ですが継続して開催します。 今後の連絡をご希望の方は返信用の葉書に住所と氏名を書いて投函してください。
2つ目は嬉しいお知らせです。14年間にわたり厚生連で栄養指導に当たってくれた小林澄さんが結婚されて山梨を去られる事に成りました。ちょっと面倒で辛い栄養指導も小林さんの人を引き込む様な笑顔で救われた患者さんも多いのではないでしょうか? 皆さんの気持ちも代弁して、誌上で『小林さん有り難う。また会う日まで!』 |