原口クリニックは山梨県甲斐市の 内科 糖尿病 透析 腎臓内科 甲状腺 巻き爪 の専門病院です。

原口内科・腎クリニック

  療養一口メモ ~透析~

 

IgA腎症の治療:蛋白尿をどうやって減らすか

ロサルタンとジピリダモール

 皆さんお元気ですか?
 今日はIgA腎症についてお話しします。
 IgA腎症は1968 年にフランスの J. Berger と N. Hinglais の発表以来存在が知られる様になった腎炎です。 日本の慢性腎炎の半分を占めます。 日本の統計では比較的予後が悪く4割近くが20年ほどで慢性腎不全になるとされています。 これは腎臓に針を刺す検査(腎生検)をするくらいの比較的病気の重い人が対象の成績です。 軽い人は診断がつかないまま放置される事も多いので実際の予後は不明です。
 2011年に日本腎臓学会誌に発表された進行性腎障害に関する調査研究班の「IgA腎症治療指針—第3版—」は国内外の研究成果を取り入れて日本の主要な腎臓内科の先生方が集まって取り決められた治療指針です。 治療指針の本文は非常に難しく書いてありますが簡単に言うと通常の血液検査と尿検査で重症度を知るにはたった二つの項目が大切です。

1)尿蛋白(一日当り0.5g以上か?)
2)クレアチニンから推算する腎機能(eGFR)が60ml/min以下か?)です。 

この中で今日は尿蛋白の減量に薬剤が有効であった2例をご紹介します。

 1例目は30代前半の女性です。腎生検をおこないIgA腎症の診断がついています。 何年も病気は落ち着いていましたがグラフで示しします様に次第に尿蛋白が増えてきました。 治療を開始した2010年はじめには1日当り0.5gに達する尿蛋白が見られました。しかしARB(アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の一つであるロサルタンを用いるとグラフの様にどんどん尿蛋白が減ってきました。 その後妊娠希望があったためロサルタンを中止したところ再び尿蛋白が一気に増加しました。IgA腎症の尿蛋白にロサルタンが有効であった事を示す貴重なケースです。 

 

 2例目は50代前半の女性です。 この方はご本人の希望もあり長い間ARBを使用する事が出来ませんでした。 悪玉コレステロールが高かったのでスタチンを用いて脂質異常症の治療だけ行っていましたが、段々尿蛋白が増えてきました。 そのため2011年からARBを使いました。 この方にはARBが効きませんでした。 困って2011年の末から使いだしたのが古いお薬でジピリダモールと言う物です。 非常に古くから使われている薬ですので近頃の薬の様に世界中で臨床試験を行った物ではありません。 また古い薬ですから新薬とは異なり多大な宣伝費をかけて医者に宣伝する事もありません。 ところが効くときは効くのですね。 使いだしてからみるみる尿蛋白が減ってきました。 このかたでは尿蛋白の増加とともに低下していた腎機能が少し改善が見られる様になってきました。 お二人ともこれ以上の腎機能の悪化が無ければ良いですね。

▲このページのTOPへ

 

◀◀前の記事へ 

 次の記事へ▶▶