原口クリニックは山梨県甲斐市の 内科 糖尿病 透析 腎臓内科 甲状腺 巻き爪 の専門病院です。

原口内科・腎クリニック

  療養一口メモ ~透析~

 

〜尿の異常について〜
検診の尿検査で血尿蛋白尿を指摘されたらどうするか?

 慢性の腎臓病の話、それに関連して蛋白尿と血尿についてお話をします。
 腎臓は左右にあり大きさは各々握りこぶしぐらいの大きさです。ここに心臓の拍出した血液量の約1/4が流れ込む血管と血液に満ちた組織です、その血液を処理して毎日約1.5リットル程度の尿を作り出します。 体でできた老廃物、有機酸、尿毒素は腎臓を通って体の外に出るので、腎臓は常に毒素にさらされています。そのため慢性腎炎など一次性の腎臓自体の病気の他にも、体の色々な影響を受けて心臓、肝臓、糖尿病などに続発して悪くなる事もあります。また老化とともに腎機能は低下して80歳ぐらいでは若い人の60%ぐらいになります。このため人口の高齢化とともに腎臓の悪い方の人数がものすごい勢いで増えています。
 腎臓病の特徴をいくつか挙げてみましょう。腎臓は予備能力の大きな臓器で通常は本来の機能の20〜30%程度しか使われていません。そのため腎機能が悪化してもなかなか症状が出にくいのが第一の特徴です。同時に腎機能障害が著しくなると、一気に浮腫、食欲不振、吐き気、呼吸困難、貧血、皮膚のかゆみなど多彩な症状を引き起こします。これが第2の特徴です。 第3の特徴は残念な事に腎障害は長期間放置すると回復しない事が多い事です。 以上をまとめると『慢性の腎疾患は密かに進行し気づいたときには手遅れ』と言う事になってしまいます。 
 しかし、慢性腎疾患は尿検査をすると発見できます。腎臓病のほとんどが蛋白尿または血尿あるいはその両者を伴っています。日本では人間ドックや、集団検診、昭和48年から導入された学校検尿などが慢性腎疾患の発見に大きな効果を上げています。読者の皆さんは蛋白尿と血尿を比べると血尿の方が怖いと漠然と考えられていると思いますが、これは腎癌や、膀胱癌の場合で、それ以外では蛋白尿の方が断然怖いのです。例えば尿検査で血尿蛋白尿両方が陽性の方は10年間で腎不全になる確率が約3%ですが、血尿単独ではその10分の1にもなりません。
 一方、腎臓専門医の立場から見るとせっかく検診で見つかった尿の異常が有効に活用されているとは言えません。理由は主に二つあります。まず始めに、蛋白尿のほとんどがクラブ活動などの運動のし過ぎ、風邪の発熱、肉の食べ過ぎなど病気と関係のないものです。このため、内科医であっても理由もなく蛋白尿を軽視して病気を見落としている例があります。 更に慢性腎炎の代表であるIgA腎症などは病期が20年以上にも及ぶために1、2年前の検診での血液データなどと比較しても病期の進行が分からないのです。しかし、どのように軽微な進行であっても一度進行するとなかなか元には戻りません。そして、IgA腎症は20〜30年前に考えられていたような軽い病気ではなく20年で3〜4割の方が透析になる比較的重い病期だという事がわかっています。しかし、現在では治療法が進歩して扁桃摘除術にステロイド治療を組み合わせた積極的治療が行なわれ、有効な薬剤も開発され、早期に治療すれば完治する可能性もある病気だと考えられるようになりました。 
 このように、腎臓の慢性疾患は初期には症状に乏しく見逃されがちですが、軽微な尿の異常でも放置せずしっかりとした検査を受けて、自覚症状に頼らず専門医による診断を受ける事が大切です。

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