原口クリニックは山梨県甲斐市の 内科 糖尿病 透析 腎臓内科 甲状腺 巻き爪 の専門病院です。

原口内科・腎クリニック

  療養一口メモ ~糖尿病~

 
診断基準 糖尿と高血圧

 記録的な暑さの2004年の夏も終わり町並みにもそこはかとなく秋の色が忍び込んできました。甲府盆地から眺める周辺の山々も輪郭がすっきりとしてきたように思うのは気のせいでしょうか?
 今回の『お元気ですか?』は今年7月に開いた糖尿病教室の前半の内容を収載してお届けしたいと思います。糖尿病理解の基本学習という事になります。
 本日お話しするのは糖尿病になる前の糖尿病予備群の方々に関する話ですが、病気の理解の基本となる鍵が含まれています。

まずは糖尿病と診断されるにはどんな基準が適用されるのか見てみましょう。

① 1999年改定糖尿病診断基準

  糖尿病の診断基準は1999年に改訂になりました。その基準は以下のようなものです。皆さんの血糖値やHbA1cの値と比較してみてください。

1999年改定糖尿病診断基準
●1、2、3いずれかに該当する時は糖尿病型
  1:随時血糖200mg/dl以上
  2:早朝空腹時126mg/dl以上
  3:負荷試験で2時間200mg/dl以上
●別の日に検査して上記1、2、3いずれかで糖尿病型を確認すると糖尿病
●1、2、3いずれか一つでも
   臨床症状がある時、HbA1Cが6.5以上の時
   網膜症がある時には糖尿病と診断してよい。

このようにして診断された糖尿病患者は日本中で700万人いると云われています。
そして上記の診断に至らないものの発症の可能性の高い人々を糖尿病予備群と呼んでいます。

② 糖尿病は突然発症する訳ではない。

  昨年ある職場の集団検診受診者のデータを解析する機会がありました。この時の結果を少しお話しします。図1は糖尿病の可能性があるが、診断基準に満たない受診者(すなわち検診では『糖尿病ではないが気をつけた方がよい』=糖尿病予備群)を検討したグラフです。これをみると年齢があがると少しずつ血糖があがる事が分かります。しつこいようですが繰り返すとこのデータは糖尿病ではなく、糖尿病予備群の方々のデータです。 
 続いて図2を見てみましょう。これを見るとビックリしますね、横軸に示した年齢が上がると縦軸に示したHbA1Cも次第にあがっています。 という事は図1と図2を合わせて云うと年齢が上がるとHbA1Cも血糖も次第にあがるという事です。 分かりやすく云うと年齢が上がると糖尿病になりやすくなるという事です。
 糖尿病は肥満、運動不足、過食など自分で病気を招いてしまう側面も多く存在しますが、糖尿病は自分が気をつけていても向こうから加齢と共に忍び寄ってくると云う面があるようです。

③ 糖尿病は高血圧と共にやってくる。

  糖尿病は現在生活習慣病と云われています。生活習慣病は幅の広い診断名で高血圧や高脂血症もこの中に入ります。 図3では図1図2で対象とした糖尿病予備群の方々を対象としてその血圧を測定してみました。 驚くべき事に『糖尿病ではないが気をつけた方がよい』と云われた方々の約40%に高血圧が存在します。 正常の方々には当然このように高率に高血圧が合併する事はありません。 つまり糖尿病は高血圧と共にやってくるというわけです。 糖尿病と高血圧が一緒におこる事には理由があります。 膵臓から分泌されて血糖を下げるインスリンの働きが悪くなると糖尿病がおきやすくなります。現在ではこのインスリンの効きが悪くなると血圧が上がる事が分かってきました。 また肥満も血圧と血糖を同時にあげる事が知られています。 年齢と共に起きてくる肥満が危険な訳が分かりますね。 では本当に年齢と共に肥満は起きてくるのでしょうか? 

④ 肥満と糖尿病

 検診の対象となった方々は職場の方々ですから定年前の60歳以下の方々のみです。 図4を見てください。 年齢が上がると肥満度が上がっています。2型糖尿病の発症の平均は60歳ですから、定年退職の頃にはすっかり糖尿病を発症する準備が整っているとい云う皮肉な結果になります。 糖尿病予備群の方々は知らず知らずのうちに肥満を通じて糖尿病に近づいているのでしょう。

⑤ 最後に

 現在厚生連健康管理センターの外来を受診している患者さんの中に全く薬剤を使わずにHbA1cを正常に近い値に保っている方々がいます。この人たちは糖尿病であることは間違いないのですが、かなり糖尿病予備群に近い状態です。ですから、本日の話はかなり参考にしていただけたのではないかと思います。 一部の方は『自分は高血圧と糖尿病があるけど高血圧は親譲りなので心配ない。糖尿病だけ直せばよい』という方がいますが、これは間違いです。 本日お見せした糖尿病は高血圧と共にやってくるというデータから2つの病気が密接に関連している事を理解していただけたでしょうか? 
  病気に負けずに健康づくりに励みましょう。

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